青い空、森の中のまっすぐな一本道。
銀色の自転車が光って見えた。



誰が乗っているの?
ここからじゃ見えないよ。






「七瀬、泣かせてごめん。」

ふいに声が聞こえてきて私は状況を理解した。




そっか。
私は結城に告って振られたんだっけ。



「俺、あいつとは別れたから。」

別れたって・・・、どうして?
そう尋ねようとして振り返った私は結城に抱きしめられていた。





「だから俺と付き合おう。」

付き合おうって・・・、なんで?どうして?
私、ついさっき振られたばっかりなのに・・・。





結城の腕の中で必死に考えていたら、誰かが遠くから私を呼んだ。





「つぐみーーーー!おきなさぁぁぁぁい!!何時だと思ってんの!!」



















charm




















夢か。
また、結城の夢みちゃったなぁ。
いいとこだったのにお母さんてば邪魔してくれちゃってさ。




つぐみは寝ぼけた頭をなんとか回転させると、母への恨み言をぶつぶつと呟いた。
時計をみると遅刻ぎりぎりの時間。
急いで身支度を整え、彼女は家を飛び出した。








結城 大介はつぐみの小学校時代の同級生。
6年生になって初めての席替えでつぐみは大介の後ろの席になり、
それがきっかけで二人は仲良くなった。


小学校の時、つぐみのクラスでは交換日記が流行っていた。
内容なんてたかがしれていたけれど、クラスの女子たちは結構真剣に
いろいろ書いていたものだった。
特に人気のコーナーはクラスの男子のランキング。
今までつぐみのランキング圏外だった大介が、ランキング1位になるのに
そんなに時間はかからなかった。




大介は顔、頭、性格、どれをとっても中の中といった感じで、
クラスの中ではたいして目立つ存在ではなかったのに、
つぐみは彼のことをどんどん好きになっていった。




大介のことを好きになってから、つぐみは学校に行くのが楽しくてしょうがなかった。
でも、あっという間に小学校生活は終わってしまい、
つぐみは私立の女子中へ、大介は区立の共学の中学校へと進学した。
卒業以来二年、ふたりは会っていない。
その代わりに、つぐみの夢の中に大介は出てくるようになった。
月に1回くらい、つぐみは夢の中での逢瀬を楽しんでいた。














とはいえ、現実でも会えるものなら会いたいと思うのが乙女心。
学校からの帰り道、遠回りして大介の家の前を通って帰宅するのが
最近のつぐみの日課になっていた。



ストーカー行為に片足突っ込んでいると言えなくもない行動だが、
もしかしたら大介に会えるかもしれないという期待感のほうが勝っていた。




この恋に決着つけないと先には進めないのだ。




つぐみは自分にそう言い聞かせた。









でも、こうしてせっせと通ってるのに、大介に会ったことは一度もない。
基本的な生活時間が違うんだろう。


「今日もだめかぁ・・・。」


つぐみは大介の家の前を通り過ぎてため息をついた。






彼女の足はいつも通り、途中のコンビニの中へと吸い込まれていく。
ここで立ち読みするのも日課となっていた。
雑誌をパラパラと捲った後、適当におかしを見繕ってレジへ向かう。



この新作チョコは明日学校に持っていこう。
さやかと恋バナしながらチョコやけ食いだぁ!

こうして悶々としながら、私の青春は過ぎていっちゃうのかなぁ・・・?

つぐみはぼんやりそんなことを考えていた。






















「さやか〜。秋の新作だよぉ。」
「ぅわお!ありがとー。」
「やけ食いに付き合ってよね。」
「やけ食いって何よ?」
「だって、結城にちっとも会えないんだもん。」
「そんなの電話でも何でもすればいいじゃん。」
「そういうのはなんか嫌なの〜。ワタシガンバリマス!みたいなのは嫌なのよ〜。」
「意味わかんないから。」
「だから〜、あくまでも自然に再会したいわけよ。」
「自然にって言ったって、結城の家の前うろうろしてる時点で自然じゃないから。」
「それは見逃してくれ〜。」
「私に言われてもねぇ・・・。」




つぐみの言葉に苦笑するさやか。




さやかはつぐみの小学校からの親友で、同じ私立中に進学した。
もちろんつぐみの片想いのことは知っている。


「それにしても、結城ってそんなにいいかねぇ?」
「わたしにとっては最高の人だもん!」
「つぐみって結構かわいいのに、結城じゃ勿体無いと思うよー。」
「私が良いって言ってんだからいいの!」
「それで結城に振られたりしてねー。」
「いや〜。そんなこというの言うのやめて〜!」
「そういえば結城を好きになったきっかけって聞いてないかも。」
「きっかけ?きっかけはさ・・・。」


さやかに尋ねられて、つぐみは思い出すようにゆっくり話し始めた。























6年生になってはじめての席替えの後、結城が私を振り返っていった。

「七瀬、よろしく〜。」
「うん。でも、結城っておしゃべりの常習犯だよね。私を巻き込まないでよー。」
「そう言われたら巻き込むしかないっしょ。」
「えー、むかつく〜。」

私たちはこそこそと笑いあった。





私の忠告を無視して、案の定結城はしょっちゅう後ろを振り返っては
私に話しかけてきた。

「昨日のドラマ見た?」
「今日の体育、ドッヂだぜ〜。」
「ジャンプ買った?」


ほんとにどうでもいいことなのに結城はいっぱい話しかけてきた。
おかげで私まで先生に目をつけられてしまって、内心ひやひやしてたけど、
彼が話しかけてくれるのは密かに嬉しかったりもした。





そんなある日、

「七瀬、消しゴム貸して。」

いつものように後ろを振り返って結城が言った。

「いいよ〜。」

私が返事をする前に、結城は私の机の上から消しゴムを奪っていった。





算数の授業が終わって休み時間に入り、
そういえば消しゴム返してもらってないやと思って、
私は結城の椅子の下をトントンと蹴った。

コレが私が結城に話しかけたいときの合図だった。


「何?」
「消しゴム返して。」
「ん、ちょっと待って。」

そう言って彼は一度正面を向いて消しゴムを手に取ると、
私の目の前に消しゴムをかざし、さっと消しゴムのケースを取った。

「あっ!」

私は慌てた。
だって、その消しゴムには"おまじない"をかけていたから。






その当時クラスの女子の間で流行っていたのだ。
新しい消しゴムに好きな人の名前を書いて元のようにケースをつけて、
その消しゴムを使い切ったら恋が成就するっていうおまじない。



急いで奪い返そうとしたけど、一瞬早く結城が手を持ち上げ私の動きをかわした。

「七瀬って元木のことが好きなんだ。」

消しゴムをまじまじと見つめて結城はそう言った。


「ち、違うよ。それは前だもん。今は違う人だもん。」

私は苦し紛れにそう言った。
ほんとはまだちょっと元木くんのことすきだったけど・・・。


「じゃーこの消しゴムいらない?」
「いらないよ!」
「それならこれは俺がもらう。」
「えっ!なんで・・・。」
「かわりにコレやるよ。」

そう言って自分が使ってた消しゴムを私に手渡した。
かわいらしさの欠片もない、大きくて白い平凡な消しゴム。




「コレ、結城の消しゴム?」
「うん。交換しよ。」
「いいけど?」

腑に落ちないまま、私は結城と消しゴムの交換をした。




私の消しゴムを結城が使ってて、結城の消しゴムは私が使ってて、
なんだか二人だけの秘密をもってしまったようで、すごくどきどきした。



それ以来、消しゴムを使うたびに結城のこと考えちゃって、
私の心は次第に結城に占領されていった。

気がついたらめちゃめちゃ好きになってた。

















「・・・そういうわけよ。」
「ふーん。いいねぇ。若いねぇ。」
「でしょ?いいでしょ?」
「その消しゴムってまだ持ってるの?」
「あったりまえじゃん!」



つぐみはペンケースの中から消しゴムを取り出した。



「ぜんぜん減ってないじゃん。」
「だって勿体無くて使えないもん。」

そう言って消しゴムをしまおうとしたつぐみをさやかが引き止めた。






「もしかして、結城もおまじないかけてたりして〜。」
「何それ?」
「だから、それにつぐみの名前書いてたりして。」
「ええっ!」
「ケース取ったことないの?」
「な、ない・・・。そんなこと考えもしなかったもん・・・。」
「取ってみたらぁ?」
「えっ?!なんか急にどきどきしてきた。」
「はやく見てみなって。」

さやかに急かされてつぐみは消しゴムをぎゅっと握り締めた。




「と、取るよ。」
「うん。」

ゆっくりとケースをスライドさせたつぐみの目に飛び込んできたのは、
白くてツルンとした消しゴムの本体だった。






「なあんだ〜。さやかが期待させるから・・・。」

横目で睨んで恨み言を言おうとしたつぐみを遮ってさやかが声を張り上げた。

「つぐみ!裏!裏見て!!」
「うら?」

さやかの声に驚いてつぐみは消しゴムをひっくり返した。







「何コレ!?」
「結城 大介だって・・・。」

そこには結城の角ばった字で、"結城 大介"と書かれていた。

「なんで?なんで結城の名前が書いてあるのだ?」
「ふふふふふ・・・。」


さやかがくすくす笑い出す。



「私わかっちゃった〜♪」
「?」
「結城がこれをつぐみにあげたらつぐみはこの消しゴムを使うじゃん。」
「う・・・ん。」
「そしたらつぐみが結城にむけておまじないかけてることになるでしょ。」
「あっ!そっかぁ。」




でも、それなら…。




「結城も私のこと好きだったって…こ、と?」
「そうなるね〜。」



にっこにこの笑顔を浮かべてさやかが返答する。




「でも、でも、単に名前つけてただけかもしれないよ!」
「いや〜、小6にもなって消しゴムに自分の名前なんて書かないっしょ。」
「昔から使ってたかもしれないし。」
「それにしてはキレイだよ。」
「ん〜〜。」



結城が自分のことを好きだったとさやかは確信しているようだが、
つぐみはまだ信じられなかった。




小学生の結城はどんな気持ちでコレを書いたんだろう。
算数の授業中、真っ赤な顔して消しゴムに自分の名前を書く大介の姿が
つぐみの脳裏に浮かんだ。


彼の必死さが消しゴムから伝わってくるような気がして
つぐみの心がじんわりあったかくなる。


私、結城に想われていたんだ。
違うかもしれない、勘違いかもしれない。
でも、そう思うことにしよう。
つぐみは嬉しくて、嬉しくて、心がふわふわと飛んでいってしまいそうだった。





















大介の消しゴムの秘密が判明して数日後、
つぐみはいつものように遠回りして大介の家の前を通った。

きょうもやっぱりそこには誰もいなくて、
つぐみはすごすごと途中休憩地点のコンビニへ入った。




誰にぶつければいいかわからない怒りが数日前からつぐみの中でうごめいている。


私と結城って実は両想いだったわけじゃない?
それなのにどうして私たちは今離れ離れなわけ?
結城はどうして私に告白しなかったんだろうか?
私だって、なんで卒業式の後に結城に好きだって言わなかったんだろう?
告ってたら今頃私たちはらぶらぶで・・・。



つぐみの頭の中が妄想モードに切り替わったその時、
雑誌コーナーに突っ立っていたつぐみの横を黒い人影がすり抜けて行った。








えっ!?
うっそぉ!?

「結城?」

つぐみの素っ頓狂な声に呼び止められた相手は振り返ってつぐみを見返した。


「七瀬?」

あまりのタイミングにつぐみは卒倒しそうになった。





「七瀬じゃん!こんなとこで何してんの?」
「何って、立ち読みを・・・少々・・・。」
「七瀬ん家ってこの辺だっけ?」

痛いところを突っ込まれてつぐみは冷や汗がでそうになった。



「い・・・やぁ。それより・・・。結城、久しぶりだね・・・。」
「おう!卒業以来じゃねーか?」



久しぶりすぎて涙が出そう。
本物の結城は夢の中で見る結城より数段かっこいいとつぐみは思っていた。
すっかり大人っぽくなった結城。
それに比べて自分はちっとも変わってない。
子どもっぽくて恥ずかしい。



つぐみはやっと大介に会えたというのに、まともに顔が見られなかった。
そんなつぐみの様子に大介はちょっと困った顔をして、
でも、眩しそうにつぐみの顔を見るとにこっと笑って言った。


「七瀬、変わってねーな。」
「悪かったわねぇ。結城はすごく変わった気がする。」
「だろ?かっこよくなっただろ?」
「ノーコメント。」
「なんだよそれー?」

うそだよ。
すごくかっこよくなっててびっくりした。



つぐみは心の中で呟いた。





「七瀬、ここのコンビ二よく来るの?」
「えっ?えっと、ときどき・・・。」

毎日来てるなんて言えなくてつぐみは言葉を濁した。


「俺、そろそろ行くよ。七瀬いたらエロ本の立ち読みできねーし。」
「え、エロ本っ!?」
「冗談だよ。」

赤面したつぐみをみて大介が小さく吹き出した。


「じゃーな。」
「う、うん。」


もうバイバイなの?
出口に向かって歩き出した大介をつぐみは引き止めることができなかった。








行かないでほしい・・・。

そう思っていても何もできない自分が悔しい。


でも、つぐみの気持ちは溢れ出していた。


やだ、行かないで・・・。
やっと会えたのに。
私、言わなくちゃいけないことがあるのに。





動き出した心とは裏腹に体は硬直して思うように動かない。
つぐみは唇を噛み締めて下を向いた。












神様!私に勇気をください!!!












心の中でそう叫ぶと、足元に置いてあったかばんを引っ掴み、つぐみは駆け出した。
外に出て大介の姿を探す。



行かないで!
待って!




声にならない叫びを胸に、つぐみは走った。








信号の中程まで進んでいた大介を見つけてつぐみは叫んだ。




「結城!待って!!」





つぐみの大声を聞いて大介は振り返った。
側にいた通行人も驚いたようにつぐみを見つめる。





「行かないで!待って!!お願い!!」

つぐみの必死の形相を見て戻ろうとした大介に、クラクションが浴びせられる。
すでに信号は赤に変わっていた。


信号の向こう側で、泣きそうな顔をしたつぐみがこぶしを握り締めていた。






「わたし、結城の事、ずっと好きだった!」

車の音にかき消されないようにつぐみは必死に叫んだ。




「ずっと会いたかったの・・・!会って言いたかったの!結城のことが好きだって!!」






そこまで言うとつぐみは泣き崩れた。





自分が何をしてるのか分からなかった。
伝えなきゃ、好きって伝えなきゃ、頭の中はただそれだけだった。



周りの音が何も聞こえなくて、世界にたった一人取り残された気分だった。





















ぽんぽんと肩を叩かれて顔を上げると、大介が苦笑していた。

「絶叫告白・・・。」

そう言って大介は吹き出した。



「何よぉ・・・。笑わないでよぉ。」

そう言いつつもつぐみ自身も笑いが込み上げてくる。



「必死だったんだもん。しょうがないじゃん・・・。」

涙でぐしゃぐしゃの顔に大介の指が触れる。

「泣くなよ。俺が困るじゃんか。」
「だって、興奮しちゃって止まらない。」
「ほらっ。」

そう言って大介が手を差し出し、つぐみはその手に掴まって立ち上がった。




「大丈夫?」
「頭に血が上ってくらくらする。」
「しょうがねーな。」

大介はそう言うとそのままつぐみの手を取って歩き出した。







二人は5分くらい無言で歩いていた。

どこに行くんだろう?
つぐみは疑問を口に出せないでいた。




そんなつぐみの心中を察したのか大介が口を開いた。

「川のとこ、遊歩道ができたの知ってる?」
「ううん。こっちのほうは来たの久しぶりだから。」
「犬の散歩でよく行くんだけどなかなかいい場所なんだ。そこでちょっと話そう。」
「うん。」


話すって何を話すんだろう?


つぐみはどきどきしていた。
告白の返事を聞かせてくれるのかな?


繋いだ手を見てにやけながら、つぐみはそう思った。









川岸にできた遊歩道はほんとにいい場所だった。
レンガブロックで舗装された土手に等間隔でベンチが並べられ、
犬の散歩をする人やジョギングする人たちが行きかっている。




つぐみと大介は空いているベンチに座った。

「七瀬にさ、言わなきゃいけないことがあるんだ。」
「何?」
「俺、今、彼女がいるんだ。」

思いもよらない大介の言葉に、つぐみは固まった。




「彼女・・・、いるんだ・・・。」

そう言うのが精一杯だった。



「こんなところまで引っ張ってきて、期待させるようなことしてごめん。」
「・・・・・・。」
「でも、七瀬が俺のこと好きって言ってくれてすごく嬉しかった。」
「ほんとに?」
「うん。でも、受け止めることができなくてごめん。それをちゃんと言いたくて・・・。」
「そっか。しょうがないもんね・・・。」
「ほんとに嬉しかったから・・・、その、言ってくれてありがとうな。」




ショックはショックだけど、自分の目を見て正直に話してくれた
大介の行動がつぐみは嬉しかった。
同時につぐみの気持ちに対して"ありがとう"と言った大介が
すごく大人のように思えて、正直、つぐみはびっくりしていた。



「結城って大人だね。同じ年なのに先越されちゃった気分。」
「そんなことないよ。」
「ううん。私よりずっと大人だと思うよ。」

つぐみの言葉に大介は困ったように笑った。






「初恋は実らないっていうしね。結城のことは思い出にするよ。」
「そう言われるのもちょっと悲しいけどな。」
「なによ〜。自分は彼女がいるくせに、私の気持ちまで握っとこうとするのは
 ずるくなあい?」
「はい、ずるいです!」


大介の言葉につぐみは苦笑した。



「時間はかかるかも知れないけど、ちゃんと納得したから思い出にする!」
「うん。」
「結城は彼女と仲良くね。」
「わかってる。」



ここまで言えるなんて立派じゃないとつぐみは思っていた。
大介が自分に対してきちんとした対応をしてくれたのだから、
自分も大介に嫌な思いをさせることはしたくなかった。






















「ここでいいよ。」
「家まで送るよ。」
「いいよ。そんなにやさしくされたら忘れられなくなる。」
「そっか・・・。」
「だからここでいいよ。」

大通りから住宅街へ伸びる細い道。
なだらかな下り坂をつぐみは歩き始めていた。


「もし、また、偶然会ったら無視しないでよ!」
「するかよ!」

つぐみの言葉に大介が苦笑する。



「じゃあね!ばいばい!!」
「気をつけてな!」


大介に背を向けて歩きだしたつぐみを、夕焼けのオレンジ色の光が優しく包む。
そんなつぐみの背中を大介は見つめていた。






どんどん小さくなっていくつぐみの姿をみて、
ふいに、遊歩道で飲み込んだ言葉が自然に大介の口をついた。












「七瀬!! 消しゴム覚えてるか?」














大介が言った一言につぐみの歩みが止まる。



覚えてるにきまってるじゃん・・・。
ずっとあれが私の支えだった。





涙がこぼれそうになって大介に背を向けたままつぐみは頷いた。




「俺、あの消しゴムにおまじないかけた!おまじないなんて胡散臭いって思ってたけど、
 結構効くもんなんだな!」

大介の言葉につぐみは振り返った。















「七瀬、知ってた?俺もお前のこと好きだったよ!」

















大介はつぐみにむかって叫んでいた。







「知ってたよ!今頃言ったって遅いんだから〜!!」


つぐみは大介に駆け寄ろうとする足を、気持ちを、なんとか押しとどめた。







「やっぱり、結城のこと忘れるの時間かかりそう!」

つぐみはそう叫ぶと坂道を走りだした。




「結城ーー!ばいばーーい!」





つぐみの小さい体が跳ねるように坂道を下っていく。


大介の耳にはつぐみの声がいつまでも残っていた。














・・・ end ・・・












::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

                    あとがき


    リニュ前から掲載していた作品です。
    結構お気に入りなのでちょこっと手を加えて連れてきました。
    ちなみに「charm」とはおまじないのこと(らしい)です。
    小学生のときって真剣にやっていたなぁ…と思い出しました。

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    2005/9/30執筆、2007/4/28加筆、修正 さえ


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::