「今日もな〜、この後デートやねん。ちゃんと。」







忍足の声が今日も響く。






















こっちをむいて






















「お前な〜、毎日自慢してんじゃねーよ。」
「ええやん。事実やし。」
「うるせー、忍足。」



部活も終わり、部室で着替えながら
宍戸と言い争ってる忍足。




「彼女、今日も迎えにくんの?」
「ああ、そやで。校門で待ち合わせや。」
「彼女できてからすっかり付き合い悪くなったよな、侑士。」
「岳人はなんや焼もちかぁ〜。」
「んなわけないだろっ。クソクソ侑士。」
ちゃん待ってるし、はよ帰らな。」



岳人とくっちゃべってる暇はないんや〜。



そんなことを言いながら忍足はさっさと着替えて、
部室を出て行く。






「ほな、お先〜。」
「お疲れ様。忍足。」
「おお!もな。」



すれ違い様にぽんぽんと私の頭に軽く手をやって、
忍足は去っていく。






行っちゃった・・・。






他のみんなに気付かれないようにじっとして、
私はまだ残る彼の手の感触を味わっていた。

















もう1ヶ月経つだろうか?



彼の口から私と同じ名前が聞こえてくるようになったのは・・・。








忍足が、ちゃん、ちゃんと嬉しそうに彼女の名前を
連呼するたびに、私はちょっとしたパニックになる。


自分を呼んでいるのではないと分かっていても
彼の口から""という単語が飛び出してくるのは心臓に悪い。





この状況。

自分でも辛いと思う。



片想いの相手の彼女が自分と同じ名前だなんて。






でも、彼の嬉しそうな顔を見ていると、
それはそれでいいか・・・なんて思ったりもしてしまう。




病的な感覚・・・だと思う。


末期だと思う。





ここまできちゃったら、完治する見込みは
今のところない・・・と思う。

















「おい、。」
「何?」
「いつまでもぼーっとしてんな。部誌書いたのか?」
「あ、ごめっ。まだだ!鍵閉めとくから跡部先帰っていいよ。」
「アホが!先帰れるかっつーんだよ。」




他のみんなはもう帰ってしまい、
部室には私と跡部の二人だけ。






別に帰ったっていいのに。


跡部がいたって仕事の足しにはなりゃしないし。




「もう7時回ってるよ。遅いし跡部帰っていいって。」
「だからだよ。」
「は?」
「お前一人で帰せるかっつーこと。」
「そんな女の子扱いしなくていいって。」




あははと笑いながらそう言う私を跡部が見つめる。





「な、なによ・・・。」
「お前、ほんとにわかってねぇな。」
「だって別に・・・。」



別に夜道くらい・・・。




そう言い掛けた私を跡部が遮る。








「お前は忍足しか見てないもんな。」
「えっ!?」




な、何を言い出すんだろう、跡部は。


驚きすぎて声が出ない私の様子をみて、
跡部はさらに話し続ける。








「忍足ばっかり見てるから、
 お前を見てるやつがいることも気付かねぇんだよ。」
「跡部?」
「つらい思いしてんじゃねぇよ・・・。」
「な、何言って・・・。」
。俺にしろよ。」









これって・・・。




告白・・・?






そう思う間もなく、跡部は私を抱きしめた。






「俺だっていいかげんつらいんだからな!」
「あ、跡部!?」
「さっさと振られて俺んとここい!」
「跡部・・・。正気?」
「あったりまえだ!」




本気に取られてないと思ったのだろう。

急に焦りだした跡部の様子がおかしくて、
跡部の腕の中で吹き出してしまう。








「ごめん。私、振られる気はないの。」
「なんだと?!」
「最初っから忍足に告白するつもりなかったから。」



私の言葉を聞いて、跡部が押し黙る。




「見てるだけでよかったから。」
「そーかよ。」
「うん。見てるだけで幸せだったんだぁ、私。」



私を抱きしめていた跡部の手が緩んで私を解放する。





「過去形だな・・・。」
「えっ?」
「幸せだったって。」
「・・・・・・。」
「もう一度言うからよく聞け。」




私を見つめ跡部が言う。









「俺んとこに来い。」











呪文のように私の中に入ってくるその言葉。







完治する見込みなかったのに・・・。



おかしいな・・・。












「ねぇ・・・、跡部?」
「なんだ?」
「跡部って黒魔術とか使えちゃったりする?」
「お前は信じられないくらいのアホだな。」
「だって・・・、青学の不二くんは使えるらしいよ。
 立海の幸村くんも。」
「だからなんなんだ?」
「跡部も使ったのかなって・・・。」






私の顔を見て、おかしそうに笑ってる跡部。




「まあ、そういうことにしといてやるよ。」
「ん・・・、でも・・・、どうしよう。なんかやだな。」
「なにがだ?」
「だって、一瞬で自分の気持ち覆っちゃったわけじゃない?
 尻軽女みたいで自分で自分が許せないの。」
「それはお前が悪いんじゃねーよ。」



跡部が私を抱き寄せそう言う。





「俺様の魅力が有り余ってるからしょうがねぇって思っとけ。」




このナルシストぶり。

跡部だって相当アホじゃん。




そう思いながらも、私は心の中で跡部に感謝していた。






私を辛い恋から救ってくれてありがとう。

私を見ていてくれてありがとう・・・と。
















・・・ end ・・・












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                    あとがき


    ほんとは悲恋のお話の予定でした。
    でも途中で跡部がしゃしゃりでてきてしまい(笑)
    結果こうなりました。変わり身の早いヒロインにびっくりですが(爆)
    ま、よかったのかな?

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    2007/6/24 さえ


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