いひひ…と笑いが止まらないあたしの頭を跡部が小突く。




「気持ち悪いんだよ、お前は。」





だって、嬉しいんだもん。



あなたの隣を歩けるのが。

























反則

























「んふふ。」
「おまえやめろ。ルドルフの誰かみたいな変な笑い方。」
「だって、だって。やっと跡部が一緒に帰ってくれるんだもん。」
「今日だけだ。」
「はぁーい。分かってるって。」










入学式の日に一目惚れした、きれいな顔をした男の子。



彼がこの学校の帝王だと知るのに時間はかからなかった。
毎日、沢山の女の子に囲まれていたから。






勝ち目はないけど、じっとしてる気もしなくて、
端と端の一番遠いクラスだけど、毎日顔を見に行った。

顔を見に行くだけじゃ物足りなくて、恐る恐る
話しかけたりもした。



でも、いっつも迷惑そうに"お前は誰だ?"って顔して無視された。










「ねぇ、跡部?」
「何だ?」
「なんで今日は一緒に帰ってくれるの?何でやさしいの?」
「別に。」
「ふーん。ついにあたしの魅力に気付いたかと思ったのに。」
「あほだな、お前は…。」



心底呆れたように跡部が呟く。




「反則だよ…。」
「は?」
「そういう不意打ちのやさしさ。あたし、ますます跡部の虜になっちゃうじゃん。」
「やめてくれ…。」





嫌そうにそう言うけど、やっぱり今日はいつもと違う気がする。

でもこれ以上跡部の機嫌を損ねるのは不本意だ。
話題を変えようとあたしが口を開きかけたとき、



「別に、やさしくなんてしてねぇ。」




小さい声で跡部がそう言った。





「嘘!今日は今までで一番やさしいよ。
 一緒に帰ってくれるなんて思ってもみなかった。」



毎日誘ってるのに、こんなこと初めてだもん。




「やさしいと跡部じゃないみたい。」
「てめぇ。」
「うそうそ。」



やさしくなくても跡部のこと大好きだから。




「跡部〜。」
「何だ?」
「大好き!!」



はっとした顔をしてあたしのほうを見て、
跡部はすぐに目をそらす。



「お前は〜。すぐにそういうこと言うな!」
「だって、好きなんだもん。」






何回言ったって跡部の心には入っていかないあたしの言葉。


でもいいんだ。


届くまで言い続けるから。




「ねーねー。手つないでいい?」



返事を聞く前にさっさと跡部の手を掴む。



どうせすぐに拒否の言葉が返ってくる。
どうせすぐに振りほどかれる。



分かっているけど、少しでも跡部に触れたくて、
毎日同じ事を繰り返してる。


















あ、れ…?







あたしの手。
跡部と繋がったまま…。








なんで?
なんでだろう??






立ち止まったあたしに気付いたのか、
跡部も立ち止まる。





「今日だけだからな!」
「えっ?」
「今日、お前、誕生日だって忍足に聞いた…。だから今日だけだからな!」








耳まで真っ赤な跡部とあたし。





「ふぇ〜ん。」
「あーーーーー。もう。泣くな!」







「だって…、だって…。跡部がやさしいんだもん!!」
「だから今日だけだって…。」
「いい!今日だけで十分だよ。だって跡部がやさしいなんて気味が悪っ……。」
「てめっ。」




振りほどかれそうになる手を必死で掴む。





「ごめんってば〜。口が勝手に動いたのぉ〜。」




跡部の側にいたくて必死のあたし。






そんなあたしを愛おしそうに跡部が見つめていたなんて
その時は気付かなかった。






跡部の隣にいたくて、跡部しか見えなくて、
ようやく捕まえた跡部の手を離したくなくて。



跡部の気持ちなんかこれっぽっちも考えていなかった。
















・・・ end ・・・












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                    あとがき


    いぢわる跡部たま。
    ヒロインちゃんのこと好きなのに素直じゃないですね。
    でも反則技を繰り出したのは無意識でしょう。
    てか、ヒロインちゃんの名前でてこないし。。。すみません(汗)

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    2007/4/27 さえ


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