「翔〜。遊びにきてあげたよ。」
「毎日、毎日押しかけてくるなよ〜。」
「いいじゃん。翔だってどうせ暇してんでしょ。」
「…………。」
play vol.1
「暇人みたいに言うな!」
「だって、暇人じゃん。」
本当のことなので言い返せないのが悔しい。
「だいたいおまえさあ、中学にもなって男とつるむなよ。」
「翔のことは男と思ってないもん。」
口ではコイツに勝てない・・・。
俺は美桜とのやりとりに疲れて、美桜が来るまで読んでいた
漫画本に視線を戻した。
「ちょっとぉ、翔〜。遊んでよ〜。」
「やだよ。美桜も適当に漫画でも読んでろよ。」
「冷たいやつめ。」
そんなことを呟きながらも、美桜は俺の本棚を物色し始めた。
俺と美桜の家はマンションの隣通し。
俺らの親が俺たちを妊娠中に仲良くなったとかで、
この世に生まれてすぐに否応なしに俺たちは知り合った。
アルバムをめくれば、出てくるのは俺と美桜の2ショットばかり。
公園も児童館も幼稚園も小学校も、どこに行くにも一緒だった。
誰とでもすぐに馴染める俺と違って美桜は人見知りで、
小さい頃は俺以外のヤツとは口をきこうとしなかった。
幼稚園、小学校、中学校と成長するにつれ、美桜の人見知りは
だいぶましにはなったけど、未だに俺にベッタリなのは困りものだ。
「ねぇ、翔。あたしつまんないんだけど。。。」
美桜の言葉は無視して、俺は漫画を読み続けた。
「翔、翔ってば!」
「ええい、うるさい!じゃれついてくんな!」
「かまってよ〜。」
美桜はベッドにねっころがっている俺の腰辺りに馬乗りになって、
俺の肩を揉んだり、髪の毛をめちゃくちゃにしたりしながら、
じゃれ付いてくる。
いつものことだ・・・・・・。
いつものことだけど・・・・・・。
最近はこの美桜の行動に戸惑ってしまう。
なんていうか、その、あれだよ。
中3にもなってなんでコイツはそういうことわかんないかなー?
美桜に翻弄される自分の肉体に渇を入れ、
こっちの事情を悟られないように美桜を睨み付けた。
「おまえな〜。重いからどけ!」
「重くないよ!女の子に向かって重いとか言わないでよね!」
失礼しちゃうわ〜とぷりぷり怒りながら、そしてパンチラをサービスしながら
美桜はしぶしぶ俺の上から体をどけた。
コイツはもうちょっと女だという自覚をしないと、いつか痛い目をみるぞ。
俺はそう思って、美桜に向き直って言った。
「おまえさ、今、パンツ見えたぞ。」
「あっそ。」
「あっそ、って・・・。少しは恥らえ!女だろ?」
「だって翔に見られたってねぇ。今更って感じ?
何度も一緒にお風呂に入った仲じゃん?」
「ガキの頃だろうが。」
「そう変わってないわよ。大丈夫、だいじょーぶ!」
何が大丈夫なのかよくわからないが、美桜は俺に背を向けて
持参したポテチの袋を開け始めた。
「翔、コレ開かない。あけて。」
「なんでコンソメなんだよー。のりしお持ってこいっていっつも言ってんのに。」
「歯にのりがつくからのりしおは嫌!」
男はこういうデリケートな問題を気にしないから困るのよね〜。
などとほざきながら、美桜は俺のあけたポテチの袋を奪っていった。
パンチラとのりしお。
どっちがデリケートな問題だ?
「俺、合ってるよな?」
軽く混乱しながらも、俺は自分が正しい言い聞かせた。
美桜といると何が常識で何が非常識かときどきわからなくなる。
「ねぇねぇ。AVどこに隠してんの?」
「AVは・・・、えっと・・・。って・・・・・・えーぶい?!」
あまりにも自然な会話に任せて、俺は隠し場所を吐きそうになった。
「言っちゃいなさい。翔のママには内緒にしといてあげるから。」
「言うわけないだろーが。っていうか持ってねーよ。」
「そお?ほんとに?じゃあ、なんでDVD買ったのよ〜。」
「純粋に映画を楽しむためだよ。」
「でも、うちのクラスの横山くんはAVをこころゆくまで堪能するために
部屋にテレビとDVDを買ったらしいよ。お年玉はたいて。」
「あいつはエロエロ大魔王なんだよ!横山を基準にして物事を考えちゃだめだ。
わかったな!」
「ふーん。なんだぁ。がっかりぃ〜。」
セーフ。
なんとか美桜のするどい攻撃をかわせたらしい。
自分のナイスプレーに拍手もんだ。
それよりも・・・。
「何?美桜、AV見たいの?」
「うん!あたしまだ見たことないからさ。美紀ちゃんは見たらしいよ。」
「そういうことに興味あるんだ。」
「あったりまえじゃん。年頃だしね〜♪」
「翔は見たことあるでしょ?」
「お、俺?俺は一応・・・。」
「いいな〜。あたしも見たいな〜。横山くんに貸してって頼んでみようかな?」
「やめとけ!あいつの餌食になるぞ。」
「別になってもいいけどぉ。」
なってもいいのかよ〜!!
俺は美桜の言葉に絶句した。
「お、おま・・・。横山のこと好きなのか?」
「何言ってんのよー。好きなわけないじゃん。」
「だって・・・。やってもいいって思ってんだろ?」
「別にいつかはするんだし、AV貸してくれるならいいかなって。」
そ、それは違うんじゃないか・・・。
やっぱり、コイツの価値観を俺は理解できん!
「そんなに見たいなら俺の見せてやるよ!横山に頼んだらマジやられるぞ!」
「なんだ〜。やっぱり翔も持ってるんじゃん。」
「!! (口が滑った・・・。)但し、おふくろにぜったい言うなよ。」
「わかってる!」
美桜の期待のこもった視線を背中に浴びながら、
俺はのそのそと体を起こすと、机の一番下の引き出しから
お菓子の箱を取り出した。
「そんなとこに隠してたんだ♪翔ってばかわいい〜。」
「うっさい!さっさと選べよ。」
俺は箱を美桜に渡してプイと横を向いた。
「巨乳、巨乳、美乳、巨乳、巨乳、美乳・・・・・・。翔って乳フェチ?」
「タイトルを読むなーーー!」
「だって〜。気になるじゃん。」
「それは全部もらい物なの!俺の趣味じゃないの!」
「ふーん。」
「いいからはやく選べ!」
「はーい!」
顔を赤くして叫ぶ俺の様子を見てくすくす笑いながら
美桜は箱の中から1本抜き出して俺に差し出した。
「この人が一番かわいいからコレにする。」
「……てか、ほんとに見るの?」
「見るわよ!」
美桜は言い出したら聞かないしな・・・。
俺は諦めてDVDをセットした。
「ほい。じゃ、俺、居間にいるから。」
リモコンを美桜に手渡しながらそう言って部屋を立ち去ろうとした俺の手を、
美桜はがっちりと掴んできた。
「翔も一緒に見てよ。」
「何でだよ!無理に決まってんだろ?!」
「どうして?」
「どうしてって・・・。」
潤んだ瞳で見つめられて、俺は慌てて美桜の手を振り払った。
無理だ。
無理だ。
無理だ。
こんな密室で美桜と二人でいるだけでも最近ヤバいのに、
一緒にAVなんて見たら俺は自分の行動に責任が持てんぞ!!
「今更ハズカシがらなくてもいいじゃん。鑑賞会しようよー。」
「おまえなー・・・・・。」
俺たちがぐちぐちと揉めているうちにDVDは再生を始めていた。
「ほら!始まった!」
美桜は再び俺の手を掴んで、そのまま自分の隣に俺を座らせた。
「どうなっても知らないからな!」
美桜に聞こえないように呟いて、俺はわざとらしく はぁぁ とため息をついた。
美桜の選んだAVは教師×生徒もののよくありがちなやつだった。
一応ドラマ仕立てになっていて、画面上では今、セーラー服の主人公が
教師に説教されている場面だった。
「ありがちよね〜。」
「文句言うなら消すよ。」
「あーごめん。待って、待って。」
美桜は俺からリモコンを奪い取ると自分の横に置いた。
「こんなこと実際あるのかな?」
「あるんじゃないの?最近教師のモラルの低下とか言われてるし。」
「うちの学校でも?」
「うちの学校は聞いたことないけどさ。」
画面はどんどん進んでいき、主人公はすでに半脱ぎ状態。
キモイ教師役が主人公を机に押し倒して攻めていた。
「うわー。あんなことするんだぁ。ひぇ〜。ほぇ〜!」
美桜は楽しそうに奇声を発しながら画面に釘づけだ。
「でもさ、肝心なとこはモザイクなのね。」
「あったりまえだろ!」
「見えそうで見えないのがムカつくね〜。」
美桜に気付かれないようにこっそりと横顔を覗き見ると、
白い頬がほんのりピンクになって、妙に色っぽい。
それに体育座りは反則だろーー!
スカートはだいぶ上の方まで捲れあがっていて、
俺の位置からだと横太ももが丸見えだ。
俺はくらくらしながら、美桜の側を離れてベッドに寝そべった。
危険だ。
危険すぎるぞ。
俺は理性を総動員させて、なんとかこの状況をやり過ごそうとした。
なのに・・・。
「翔?どうしたの?」
美桜は立ち上がって、わざわざベッドのところまで近寄ってきた。
上半身を倒して俺の顔を覗き込んでくる。
「なんでもない。美桜はあっちで見てろよ。」
そう言いながら上げた視線の先には、
制服のブラウスから覗く胸の谷間があった。
あああああ!!!!!
オーマイゴット!!!!
「翔?」
苦悶の表情を浮かべているであろう俺の顔を、
心配そうに美桜は見つめていた。
「大丈夫?」
「な、なんでもない・・・から・・・。」
「でも、なんか顔色悪いよ。」
そう言いながら、美桜はベッドに上がって俺の隣に座り込んだ。
画面はクライマックスシーンが流れていた。
でも、俺にはもうそんなことはどうでもよくて、
さっきの美桜の胸の谷間が脳裏に焼きついて離れない。
くそぅ。
なんで俺だけ一人でこんなに苦しんでるんだ?
好きでもないのに、一緒にAV見ただけで幼馴染みに欲情して・・・。
俺ってサイテーだな。
美桜の顔を必死に睨み付けて、俺は煩悩を消し去ろうとした。
「何よ〜。そんなに睨まないでよね。終わったよ。」
美桜はすっとベッドから降りると、リモコンを俺に手渡した。
やっと終わった。
もうすぐこの地獄から開放されるのだーー!
俺は嫌味をこめて美桜に言った。
「満足ですか?美桜お嬢様?」
「満足ですわ。じいや。おほほほほ〜。」
くすくす笑いながら再びベッドの上に上がって美桜は言った。
「翔にお礼しなきゃね!」
「お礼?」
ふいに美桜の顔が近づいてきて、やわらかいものが
俺の唇に当たった。
それが美桜の唇なんだと気付いたときにはもう、それは離れていた。
「な、おまっ、な、なにしてんだよ・・・?!」
俺はボーゼンと美桜を見つめ言った。
「翔、もしかしてファーストキス?」
「!?」
「あたしもファーストキスだよ♪」
美桜の言ってることがよく理解できなくて、
俺は言葉を失ったまま美桜を見つめるしかできなかった。
「じゃね、AV見せてくれてありがとーーー♪。」
そう言いながら美桜は部屋を出て行った。
おい!まて!
今のキスはなんだったんだよ!?
俺の心の声は美桜に届くはずもなく、いつまでももやもやと
胸の奥で渦巻いているのだった。
・・・ end ・・・
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あとがき
リニュ前から掲載していたお話デス。
女の子が男の子を振り回すのってかわいくていいなと思います。
ちなみにタイトルの「play」にはじゃれるという意味があるようです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
2005/8/28 執筆 2007/5/1 修正 さえ
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