「沙奈〜。ちょっと来てくれる?」
めずらしくママが真面目な顔つきで私に声をかけた。
「何々〜?そんな真剣な顔しちゃって?」
「突然でびっくりするかも知れないけど、ママ再婚しようと思うの!」
ママには悪いけど、私びっくりしなかった。
だって、ママに恋人がいるって分かってたし、
ちょっと前から、ママの左手の薬指にはキラキラ光るものが
はめられていたから。
「そう。」
「びっくりした?」
「あんまり。」
「なんでよー。沙奈ってクールよね。」
もうちょっと驚いてくれたっていいのに…とママがすねる。
「だって、ママ分かりやすすぎ!」
そうかしら?とママが首をかしげる。
ママってば最近ほんとに幸せそうで、
娘の私からみても、すごくキレイになった。
「沙奈は賛成してくれるよね?」
ママの問いにあいまいな笑顔を浮かべる。
私、再婚なんてして欲しくない。
パパは私が小1のときに、事故で死んだ。
それからずっと二人で頑張って生活してきたのに。
私は今の生活で十分満足してる。
ママはお医者さんだから、片親とはいえ不自由な生活はしていなかったし、
大学病院の研究室に勤めてる研究医だから、臨床医よりは時間もとれる。
ママがお休みの日は二人で買い物に行ったりして、
女だけの家庭を満喫してた。
ママもそうだと思ってたのに…。
でも、これは言っちゃいけないよね。
ママの幸せのために、本当の気持ちはそっと胸の奥に隠した。
「うん。もちろん。ママ幸せになってね!」
「沙奈ー。明日の準備はOK?」
ママが心配そうに尋ねてくる。
「うん。このワンピでいいよね?」
明日は、ママの再婚相手との顔合わせ。
新宿の高級ホテルの中にある中華レストランへ行くらしい。
一応おとなしめのデザインのベージュのワンピースを選んだ。
「うんうん。それならいいわね。」
ママのお墨付きをもらい一安心。
「未来のパパとお兄ちゃんにちゃんと挨拶してよね。」
「はいはい・・・ってお兄ちゃんて何?」
「あれっ?言ってなかったけ?」
なんか嫌な予感。
「彼の方には、沙奈と同じ年の男の子がいるのよ〜。」
「はいーーーーーーー!?!?!?」
「沙奈のほうが誕生日が後だから、妹なの。」
いやいや。
そういう問題じゃなくてね。
「向こうに子どもがいるなんて聞いてないよ!しかも男?!」
「ま、いいじゃない。仲良くやってよね。」
一応、私、年頃の女の子なのよ?
急に同じ年の兄が出来ますからよろしくって言われたって
よろしくできるわけないじゃん!!
「ママ〜!!」
私の怒りモードを察知して
「じゃ、ママそろそろ研究室行かなきゃ〜。」
なんて言いながら、ママは家を飛び出していった。
呆れて物も言えないよ。
ママは昔っから、とてつもなくアバウトだ。
そしておそろしくプラス思考だ。
どんな問題が起ころうとも "何とかなる" で乗り切ってきた人だ。
(実際何とかなってるからすごいんだけどさ…。)
よくあんな性格でお医者さんが務まってると思うよ。
とにかく私は、義理の父だけじゃなくて、義理の兄とも
上手くやっていかなきゃいけないわけだ・・・。
はあああああ〜。
ママの幸せのため、私は耐えますよ。
早めにレストランについたけど、相手側の方が先に席についていた。
「お待たせしました。」
にこやかに言うママの後ろから、
近い将来私のパパになるであろう人を観察する。
まぁ、フツー。
見た目はジェントルマンな感じ。
ハゲてないのは、ポイント高いかな〜。
その隣には、男の子が座っている。
あれが息子ね〜。
ルックスは悪くない。
いや、かなり女の子受けする感じ。
「沙奈〜。早く座って。」
「うん。」
「これが娘の沙奈。高1よ。」
ママに目で促されて、
「はじめまして…。」
とだけ挨拶した。
「こちらが山野 陽一郎さんと息子さんの陽平くんよ。」
山野親子がどうもと会釈する。
食事は思った以上に和やかに進んでいた。
「沙奈ちゃん、学校は楽しいかい?」
陽一郎さんが、尋ねてくる。
「はい。いい学校ですよ。」
「実は、陽平が一人で名古屋に残るって言っててね…。」
山野親子は現在名古屋で生活してるみたい。
再婚を機に陽一郎さんは東京に来たいと思ってるらしい。
「そうですか。」
「でも、せっかく新しく家族になるんだから、4人で暮らしたくてね。」
私は3人でも構いませんが・・・。
「沙奈ちゃんから陽平に学校のこと話してくれないかな?」
「いいですけど…。」
陽一郎さんのお願いに戸惑いつつ陽平くんを見る。
陽平くんも食事の手を止めて、私のことを見てる。
な、なんか視線が痛いんですけどぉ・・・。
意味ありげな視線に目をそらすと、陽平くんが言った。
「俺、やっぱこっちの高校に編入するよ。」
あら!よかったわ〜なんてママと陽一郎さんは喜んでたけど、
私は陽平くんの視線が気になっていたんだ。
「沙奈ちゃん、今日からよろしくね。」
陽一郎さんが私に言った。
今日、陽一郎さんと陽平くんがうちに越してきた。
顔合わせのあとすぐ、ママと陽一郎さんは入籍した。
私が、苗字が変わるのが嫌だとごねたら、
陽一郎さんはあっさり、ママの姓を名乗ることを了承した。
陽一郎さんは名古屋の建築事務所で働いていたのに、
ママと再婚するために、仕事をやめ、東京の我が家に引っ越してきたんだ。
陽一郎さんは建築士の資格を持ってるみたいで、
これを機に独立して事務所を構えるらしい。
「沙奈〜。陽平くんの荷物運んであげてー。」
2階からママが呼んでる。
何で私が…。
そう思いつつも、ダンボールを2階に運ぶ。
「このダンボール、どこに置けばいい?」
「陽平くんに聞いてみて〜。」
陽一郎さんの荷物を整理しているママが言う。
なーんか、話しずらいのよね〜。
顔合わせの時の強い視線が忘れられない。
なんだったんだろう?
部屋の入り口で、陽平くんに思い切って声をかける。
「あ、あの。これどこに置けばいい?」
「ああ。ありがとう。その辺に適当に置いといて。」
「うん。」
入り口付近にダンボールを置いて、立ち去ろうとすると
「ちょっとまって。」
と、声をかけられた。
「ん?」
「ちょっと話さない?」
「いいけど…。」
「俺たち、まだあんまり話したことなかったしさ。」
「そうだね。」
これからよろしく!と陽平くんが右手を差し出してきて私は握手に答えた。
意外ににいいやつ!
「沙奈って呼んでいい?」
「いいよ。」
「俺のことも呼び捨てでいいから。」
「分かった。」
陽平が笑顔を見せる。
なんだ。
フツーに話せるじゃん。
ほっとして私も笑顔になる。
「沙奈ってさ、親父たちの再婚どう思った?」
「ん〜。実は反対だった。」
つい本音を漏らす。
「俺も。再婚なんてしんじらんねーって思った。」
「普通、そう思うよね。」
「おまけに東京に引っ越すとか言うしさ。」
「うん。」
「でも、今は、親父が再婚してよかったなって思ってるよ。」
「えっ?なんで?」
予想外の陽平の言葉に驚いて、陽平を見つめる。
陽平も私の目をじっと見てる。
また…あの目だ。
私の苦手な、強い視線。
私の表情が固まってしまったのを見て、
陽平が慌てたように視線をはずす。
そして、笑顔でこう言った。
「だって、親父幸せそうだもん。」
「よーへー。早く〜。学校遅れちゃう!」
陽平は結局、私と同じ高校に編入した。
高校は家から徒歩10分くらい。
近いから決めた高校だけど、内部進学で大学までいけるから人気は高い学校だ。
「陽平ってもうちょっと早く起きられないの?」
「うるせー。間に合えばいいんだよ。」
「明日こそ叩き起こしてあげるから!!」
私たちは、あの日以来すっかり打ち解けて、
いや…打ち解けすぎて、憎まれ口ばっかり叩くようになってしまった。
そんな私たちにママも陽一郎さんも苦笑しつつも安心したようだった。
私はもちろん陽一郎さんとも上手くやってる。
まだパパとは呼べないけど…。
でも、陽一郎さんはそこまで望んでいないようだった。
やっと歯車が合いだした私たちだったのに、
新たな問題が起こったのはそんな時だった。
「陽平くん、沙奈。ちょっと下に下りてきてくれる。」
ママが呼びにきて、私たちはリビングに集められた。
「ママ、どうしたの?」
なんだか、ママも陽一郎さんも深刻な顔つきで、
私と陽平は戸惑っていた。
「離婚するとか言い出すなよ。」
陽平の言葉に陽一郎さんが苦笑する。
「離婚なんてしないよ。沙和子さんから大事な話があるから。」
陽一郎さんに促されて、ママが話し出した。
「実はね。ママ、海外転勤の辞令が出ちゃって・・・。」
「「海外転勤ーーーーーー!」」
私と陽平は同時に叫んでいた。
「そうなの。提携してるイギリスの大学病院に
3年間派遣されることになってしまって。」
「ママ〜。それって断れないの?」
「最初はママの上司が行くことになっていたんだけど、
都合が悪くなって、ママが行くことになったのよ。
これはもう決定事項で断れないのよ。」
「そんなぁ〜。」
やっと生活が落ち着いたところだったのに。
「沙奈ちゃんも陽平ももちろんついていくよな?」
陽一郎さんに尋ねられて、考え込む。
「わ、わたし、ここに残る!」
よく考えた末に、私はそう答えた。
「高校も入ったばっかりだし、できれば今の生活環境を変えたくないの。
だから3人で行ってきて。」
「沙奈一人じゃママ不安よ。一緒に行きましょうよ。」
ママが私を抱きしめる。
私だってママと離れたくないよ〜。
でも、少しづつママ離れしないといけないって思ってた。
これはちょうどいい機会かもしれない。
私がママに声をかけようとしたその時、
「俺もここに残るよ。」
陽平がそう言った。
「えっ!」
これには陽一郎さんがびっくりしたらしい。
「俺も沙奈と一緒にここに残るよ。親父と沙和子さん2人で行ってこいよ。」
そ、それは、私が困るかもしれない・・・。
「新婚なんだしさ、二人きりの生活を満喫してきなよ。」
陽平の言葉にママも陽一郎さんも黙り込んでしまった。
「沙奈、陽平くん、ちゃんと協力して生活してね。」
「なにかあったらすぐに連絡するんだぞ。」
「わかってる。二人ともそんなに心配しなくて大丈夫だから。」
「親父たちこそ、しっかりやれよ!」
あの後、何度も話し合って、ママと陽一郎さん二人で
イギリスへ行くことになった。
二人とも私たちを残して行くことに反対だったけど、
最後は私が説得した。
私には、陽平が残るって言い出したことは予想外だったんだけど、
やっぱ一人暮らしは不安だし、陽平がいてくれた方がいいかと思って。
でも、陽平が残るって言い出した本当の理由を知ってたら、
間違いなくイギリスに行ってただろう。
「行っちゃったね。」
人間が2人減るだけで、こんなに静かになるんだね・・・。
「沙奈、家事の分担決めちゃおうよ。」
「そうだね。」
私も陽平も小さい頃から家のこと手伝っていたから、家事全般OKだ。
一応、自分のことは自分でするを基本にして、
共有部分の掃除とかを分担制にした。
それからしばらくは平穏な毎日が続いていて、
口ゲンカはしょっちゅうしてたけど、
二人暮らしはうまくいってた。
学校は夏休みに入って、ちょうど私たちの気持ちも緩みだした。
そんな時に、私たちの関係を変える出来事は起きてしまった・・・。
・・・ NEXT ・・・
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
あとがき
リニュ前から掲載していた作品です。
タイトルがありきたりかなーと思いリニュを機に変えたかったのですが、
なかなかいいものが思いつかず、結局変更できませんでした。
ええと。。。この後からエロへと走りますので、
苦手な方はここでストップしてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
2005/6/21 執筆 さえ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
めずらしくママが真面目な顔つきで私に声をかけた。
「何々〜?そんな真剣な顔しちゃって?」
「突然でびっくりするかも知れないけど、ママ再婚しようと思うの!」
二人暮らし vol.1
ママには悪いけど、私びっくりしなかった。
だって、ママに恋人がいるって分かってたし、
ちょっと前から、ママの左手の薬指にはキラキラ光るものが
はめられていたから。
「そう。」
「びっくりした?」
「あんまり。」
「なんでよー。沙奈ってクールよね。」
もうちょっと驚いてくれたっていいのに…とママがすねる。
「だって、ママ分かりやすすぎ!」
そうかしら?とママが首をかしげる。
ママってば最近ほんとに幸せそうで、
娘の私からみても、すごくキレイになった。
「沙奈は賛成してくれるよね?」
ママの問いにあいまいな笑顔を浮かべる。
私、再婚なんてして欲しくない。
パパは私が小1のときに、事故で死んだ。
それからずっと二人で頑張って生活してきたのに。
私は今の生活で十分満足してる。
ママはお医者さんだから、片親とはいえ不自由な生活はしていなかったし、
大学病院の研究室に勤めてる研究医だから、臨床医よりは時間もとれる。
ママがお休みの日は二人で買い物に行ったりして、
女だけの家庭を満喫してた。
ママもそうだと思ってたのに…。
でも、これは言っちゃいけないよね。
ママの幸せのために、本当の気持ちはそっと胸の奥に隠した。
「うん。もちろん。ママ幸せになってね!」
「沙奈ー。明日の準備はOK?」
ママが心配そうに尋ねてくる。
「うん。このワンピでいいよね?」
明日は、ママの再婚相手との顔合わせ。
新宿の高級ホテルの中にある中華レストランへ行くらしい。
一応おとなしめのデザインのベージュのワンピースを選んだ。
「うんうん。それならいいわね。」
ママのお墨付きをもらい一安心。
「未来のパパとお兄ちゃんにちゃんと挨拶してよね。」
「はいはい・・・ってお兄ちゃんて何?」
「あれっ?言ってなかったけ?」
なんか嫌な予感。
「彼の方には、沙奈と同じ年の男の子がいるのよ〜。」
「はいーーーーーーー!?!?!?」
「沙奈のほうが誕生日が後だから、妹なの。」
いやいや。
そういう問題じゃなくてね。
「向こうに子どもがいるなんて聞いてないよ!しかも男?!」
「ま、いいじゃない。仲良くやってよね。」
一応、私、年頃の女の子なのよ?
急に同じ年の兄が出来ますからよろしくって言われたって
よろしくできるわけないじゃん!!
「ママ〜!!」
私の怒りモードを察知して
「じゃ、ママそろそろ研究室行かなきゃ〜。」
なんて言いながら、ママは家を飛び出していった。
呆れて物も言えないよ。
ママは昔っから、とてつもなくアバウトだ。
そしておそろしくプラス思考だ。
どんな問題が起ころうとも "何とかなる" で乗り切ってきた人だ。
(実際何とかなってるからすごいんだけどさ…。)
よくあんな性格でお医者さんが務まってると思うよ。
とにかく私は、義理の父だけじゃなくて、義理の兄とも
上手くやっていかなきゃいけないわけだ・・・。
はあああああ〜。
ママの幸せのため、私は耐えますよ。
早めにレストランについたけど、相手側の方が先に席についていた。
「お待たせしました。」
にこやかに言うママの後ろから、
近い将来私のパパになるであろう人を観察する。
まぁ、フツー。
見た目はジェントルマンな感じ。
ハゲてないのは、ポイント高いかな〜。
その隣には、男の子が座っている。
あれが息子ね〜。
ルックスは悪くない。
いや、かなり女の子受けする感じ。
「沙奈〜。早く座って。」
「うん。」
「これが娘の沙奈。高1よ。」
ママに目で促されて、
「はじめまして…。」
とだけ挨拶した。
「こちらが山野 陽一郎さんと息子さんの陽平くんよ。」
山野親子がどうもと会釈する。
食事は思った以上に和やかに進んでいた。
「沙奈ちゃん、学校は楽しいかい?」
陽一郎さんが、尋ねてくる。
「はい。いい学校ですよ。」
「実は、陽平が一人で名古屋に残るって言っててね…。」
山野親子は現在名古屋で生活してるみたい。
再婚を機に陽一郎さんは東京に来たいと思ってるらしい。
「そうですか。」
「でも、せっかく新しく家族になるんだから、4人で暮らしたくてね。」
私は3人でも構いませんが・・・。
「沙奈ちゃんから陽平に学校のこと話してくれないかな?」
「いいですけど…。」
陽一郎さんのお願いに戸惑いつつ陽平くんを見る。
陽平くんも食事の手を止めて、私のことを見てる。
な、なんか視線が痛いんですけどぉ・・・。
意味ありげな視線に目をそらすと、陽平くんが言った。
「俺、やっぱこっちの高校に編入するよ。」
あら!よかったわ〜なんてママと陽一郎さんは喜んでたけど、
私は陽平くんの視線が気になっていたんだ。
「沙奈ちゃん、今日からよろしくね。」
陽一郎さんが私に言った。
今日、陽一郎さんと陽平くんがうちに越してきた。
顔合わせのあとすぐ、ママと陽一郎さんは入籍した。
私が、苗字が変わるのが嫌だとごねたら、
陽一郎さんはあっさり、ママの姓を名乗ることを了承した。
陽一郎さんは名古屋の建築事務所で働いていたのに、
ママと再婚するために、仕事をやめ、東京の我が家に引っ越してきたんだ。
陽一郎さんは建築士の資格を持ってるみたいで、
これを機に独立して事務所を構えるらしい。
「沙奈〜。陽平くんの荷物運んであげてー。」
2階からママが呼んでる。
何で私が…。
そう思いつつも、ダンボールを2階に運ぶ。
「このダンボール、どこに置けばいい?」
「陽平くんに聞いてみて〜。」
陽一郎さんの荷物を整理しているママが言う。
なーんか、話しずらいのよね〜。
顔合わせの時の強い視線が忘れられない。
なんだったんだろう?
部屋の入り口で、陽平くんに思い切って声をかける。
「あ、あの。これどこに置けばいい?」
「ああ。ありがとう。その辺に適当に置いといて。」
「うん。」
入り口付近にダンボールを置いて、立ち去ろうとすると
「ちょっとまって。」
と、声をかけられた。
「ん?」
「ちょっと話さない?」
「いいけど…。」
「俺たち、まだあんまり話したことなかったしさ。」
「そうだね。」
これからよろしく!と陽平くんが右手を差し出してきて私は握手に答えた。
意外ににいいやつ!
「沙奈って呼んでいい?」
「いいよ。」
「俺のことも呼び捨てでいいから。」
「分かった。」
陽平が笑顔を見せる。
なんだ。
フツーに話せるじゃん。
ほっとして私も笑顔になる。
「沙奈ってさ、親父たちの再婚どう思った?」
「ん〜。実は反対だった。」
つい本音を漏らす。
「俺も。再婚なんてしんじらんねーって思った。」
「普通、そう思うよね。」
「おまけに東京に引っ越すとか言うしさ。」
「うん。」
「でも、今は、親父が再婚してよかったなって思ってるよ。」
「えっ?なんで?」
予想外の陽平の言葉に驚いて、陽平を見つめる。
陽平も私の目をじっと見てる。
また…あの目だ。
私の苦手な、強い視線。
私の表情が固まってしまったのを見て、
陽平が慌てたように視線をはずす。
そして、笑顔でこう言った。
「だって、親父幸せそうだもん。」
「よーへー。早く〜。学校遅れちゃう!」
陽平は結局、私と同じ高校に編入した。
高校は家から徒歩10分くらい。
近いから決めた高校だけど、内部進学で大学までいけるから人気は高い学校だ。
「陽平ってもうちょっと早く起きられないの?」
「うるせー。間に合えばいいんだよ。」
「明日こそ叩き起こしてあげるから!!」
私たちは、あの日以来すっかり打ち解けて、
いや…打ち解けすぎて、憎まれ口ばっかり叩くようになってしまった。
そんな私たちにママも陽一郎さんも苦笑しつつも安心したようだった。
私はもちろん陽一郎さんとも上手くやってる。
まだパパとは呼べないけど…。
でも、陽一郎さんはそこまで望んでいないようだった。
やっと歯車が合いだした私たちだったのに、
新たな問題が起こったのはそんな時だった。
「陽平くん、沙奈。ちょっと下に下りてきてくれる。」
ママが呼びにきて、私たちはリビングに集められた。
「ママ、どうしたの?」
なんだか、ママも陽一郎さんも深刻な顔つきで、
私と陽平は戸惑っていた。
「離婚するとか言い出すなよ。」
陽平の言葉に陽一郎さんが苦笑する。
「離婚なんてしないよ。沙和子さんから大事な話があるから。」
陽一郎さんに促されて、ママが話し出した。
「実はね。ママ、海外転勤の辞令が出ちゃって・・・。」
「「海外転勤ーーーーーー!」」
私と陽平は同時に叫んでいた。
「そうなの。提携してるイギリスの大学病院に
3年間派遣されることになってしまって。」
「ママ〜。それって断れないの?」
「最初はママの上司が行くことになっていたんだけど、
都合が悪くなって、ママが行くことになったのよ。
これはもう決定事項で断れないのよ。」
「そんなぁ〜。」
やっと生活が落ち着いたところだったのに。
「沙奈ちゃんも陽平ももちろんついていくよな?」
陽一郎さんに尋ねられて、考え込む。
「わ、わたし、ここに残る!」
よく考えた末に、私はそう答えた。
「高校も入ったばっかりだし、できれば今の生活環境を変えたくないの。
だから3人で行ってきて。」
「沙奈一人じゃママ不安よ。一緒に行きましょうよ。」
ママが私を抱きしめる。
私だってママと離れたくないよ〜。
でも、少しづつママ離れしないといけないって思ってた。
これはちょうどいい機会かもしれない。
私がママに声をかけようとしたその時、
「俺もここに残るよ。」
陽平がそう言った。
「えっ!」
これには陽一郎さんがびっくりしたらしい。
「俺も沙奈と一緒にここに残るよ。親父と沙和子さん2人で行ってこいよ。」
そ、それは、私が困るかもしれない・・・。
「新婚なんだしさ、二人きりの生活を満喫してきなよ。」
陽平の言葉にママも陽一郎さんも黙り込んでしまった。
「沙奈、陽平くん、ちゃんと協力して生活してね。」
「なにかあったらすぐに連絡するんだぞ。」
「わかってる。二人ともそんなに心配しなくて大丈夫だから。」
「親父たちこそ、しっかりやれよ!」
あの後、何度も話し合って、ママと陽一郎さん二人で
イギリスへ行くことになった。
二人とも私たちを残して行くことに反対だったけど、
最後は私が説得した。
私には、陽平が残るって言い出したことは予想外だったんだけど、
やっぱ一人暮らしは不安だし、陽平がいてくれた方がいいかと思って。
でも、陽平が残るって言い出した本当の理由を知ってたら、
間違いなくイギリスに行ってただろう。
「行っちゃったね。」
人間が2人減るだけで、こんなに静かになるんだね・・・。
「沙奈、家事の分担決めちゃおうよ。」
「そうだね。」
私も陽平も小さい頃から家のこと手伝っていたから、家事全般OKだ。
一応、自分のことは自分でするを基本にして、
共有部分の掃除とかを分担制にした。
それからしばらくは平穏な毎日が続いていて、
口ゲンカはしょっちゅうしてたけど、
二人暮らしはうまくいってた。
学校は夏休みに入って、ちょうど私たちの気持ちも緩みだした。
そんな時に、私たちの関係を変える出来事は起きてしまった・・・。
・・・ NEXT ・・・
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
あとがき
リニュ前から掲載していた作品です。
タイトルがありきたりかなーと思いリニュを機に変えたかったのですが、
なかなかいいものが思いつかず、結局変更できませんでした。
ええと。。。この後からエロへと走りますので、
苦手な方はここでストップしてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
2005/6/21 執筆 さえ
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