1限が始まっているというのに、
あたしたちは部室で緊急対策会議中。















はじまりのうた 11

















さん、口が動かないって言って、
 さっき泣いちゃったんです。」
「口なんて動いてんじゃねーか。アーン。」
「話したいことがあるけど、それを言おうとすると
 口が開かなくなるらしいです。」
「は?何だそれ?」



くだらない・・・とでも言いたげに、
跡部が吐き捨てる。




さん泣いちゃうくらい悩んでるんですよ。
 助けてあげましょうよ。」



鳳くん、いいやつ。

大好きだーーー!



忍足先輩なんかより数百倍好きだーーーー。





それなのに。

あたしの口はさっきから 侑士様、侑士様、とそればかり。


忍足 侑士教に入信したかのようだ。
(そんなの絶対はいりたくねぇぇぇ。)







「しゃべれないなら筆談は?」


ぼそっと放った日吉の一言にそこにいた全員が
尊敬の眼差しを向ける。



「そやそや、筆談て手があったな。」
「さっすが日吉!やっぱ頼りになるなぁ。」
「俺様だってそれくらい考えていたさ。なぁ、樺地。」



樺地はいねーよ。
授業中だよ。



みんなそう思ったはずなのに、誰もツッコまない。
関西人の忍足でさえ・・・。

かわいそうな跡部・・・。




「はい、さん。言いたいことここに書いてみて。」


鳳くんが用意してくれた紙に、
あたしはささっと鉛筆を走らせる。









" 昨日、変な汁を飲まされた "





「「「「変な汁!?」」」」







" 青学の乾は知ってるよね? "





「ああ、あれか。」


跡部が呟く。





" それ飲んだ後ぶっ倒れたんだけど、
 一応そのときはなんともなかったの。 "




「「「「ぶっ倒れた!?」」」」






" 今朝、朝練で忍足先輩を見たら急に口が勝手に動き出して "





「口が勝手に動いたやて?」






" 体も勝手に動いて、自分じゃコントロールできないの "







そこまで書いて、あたしはみんなを見回した。










「青学行くぞ。」



跡部の言葉にみんなが一斉に立ち上がる。



う、うそぉ。
今から?



「ほら、も行くぞ。」



跡部がどこかへ連絡し、あたしたちは校門へと向かった。









「さ、乗れ。」
「まじっすか?すげー!リムジンだ〜。」



妙にはしゃいでいる鳳くんを先頭に、
あたし達は跡部が用意してくれたリムジンへと乗り込む。



さっすがおぼっちゃまだ。
電話一本でリムジンが迎えに来るとは・・・。



車の中とは思えないふかふかのシートに感動してたら、
あっという間に青学についてしまった。












「この時間やと乾も授業中やろな。」
「関係ねぇ。」


跡部は臆することなく、さっさと青学の校門を抜け、
中へと入っていく。





「そういや、って青学に通ってたんだよな?」


日吉ーーー!
余計なことを。



「あっ、そうだったね〜。乾さんの教室分かる?」



分かるわけないじゃん!!
青学の記憶ないんだもん。




ぶんぶん首を振るあたしの様子をみて、
跡部がため息を漏らす。



「だれもお前に期待しちゃいねぇよ。」




失礼な発言に抗議しようとしたとき、
グラウンドの片隅にいる逆光眼鏡の姿が目に入った。




「あっ!いた!」


あたしの指差した方角を、
みんなが一斉に睨むと同時に走り出す。






「ま、待ってよ〜。」


氷帝テニス部レギュラーの走りに追いつけるわけもなく、
あたしは相当遅れて現場に着いた。






「貞治!!」
、どうだ、アレの効果は。」
「どうもこうもない!」
ちゃん、怒ったらかわええ顔が台無しやで。」
いやん、侑士様ったらぁ。
「この通りだ。」
「ほう、まだ効き目があるとは・・・。
 データに加えておこう。」
さんに飲ませたのは何なんですか!乾さん!!」



イチャイチャと絡んでいるあたしと忍足先輩を
止める人もなく、みんなは貞治を質問攻めにしている。





に飲ませたのは、乾汁の新バージョンを作る過程で
 偶然出来た惚れ薬だ。」
「「「「「惚れ薬?!」」」」」





惚れ薬が偶然出来るなんて、
なんちゅう副産物を生むんだ、乾汁!




「効果は数時間と見ていたが、ずいぶん持つな。」



貞治は授業中ということも忘れているのだろう。
あたしの様子を見ながらノートに必死に何か書いている。




「飲んでから薬が効くまで1時間ほど、
 薬が回ってから最初に声を掛けられた相手に惚れてしまう
 というわけだ。」








俺が声を掛けていれば!!!




乾の言葉に3人がキッとあたしたちを見つめる。





今頃、俺様が! 俺が! 俺だって! あんな風に
イチャイチャしてたかもしれないのに!!!





3人の心の声が聞こえたような気がして、
あたしは身震いをすると、(嫌なのに)忍足先輩の胸に
顔を埋めた。





、俺のまいすうぃーとはにぃ〜v」
「侑士様、愛してるっ。」




ガンガンに見詰め合ってあたしたちはさっきから
愛の言葉をささやきあっている。








キモ過ぎる。







ちゃん、そろそろちゅうでもしてみようや。」
「やだぁ、侑士様ったらv」
「目ぇ、瞑るんやで・・・、そうや、ええ子やな。」




嫌なのに。
ものすんごく嫌なのに・・・。


魔法にでもかけられたみたいに、あたしの瞼が閉じていく。





ファーストキスなのに・・・。
忍足先輩とだなんて死にたい。(←さりげなく失礼。)








抵抗しないどころか、むしろがっつくように
先輩のシャツの袖の辺りを握っている自分に
ムカついてくる。







・・・。」



先輩の手があたしの頬に添えられて、
そっと上を向かせる。




や  ば  い。





あたしの貞操の危機だというのに(←いいすぎ)
跡部たちはまだ貞治を質問攻めにしていて、
役にたちゃしない。







もうやだよーーーーーー。



どんどん近づいてくる先輩の顔。






ほんとにまじでやだってば!!!




自由の利かない体を動かそうとしていたら、
急に箍がはずれたよう、スポーンと手が振りあがった。




えっ?っと思ったと同時、その手が忍足先輩の顎に
クリティカルヒット!



先輩はそのまま後ろへ倒れこんだ。









あっ!治った!!


あたしの言葉にみんなが一斉に駆け寄ってくる。





「ほんとか!!!」
「うん。自由に動けるし、しゃべれる!」
「よかった〜、よかったね、さん。」
「みんなありがとう〜。」
「効果は18時間といったところか・・・。」
「さーだーはーるー!!なんであたしにあんなもの飲ませたのよ。」
「俺が飲むわけにもいかないからな。
 正確なデータが取れないし。
 手近な実験材料を探してたんだ。」







鬼だ

この人、鬼ですって!





「久しぶりにあった幼馴染になんてことすんのよ、まったく。」
「そうやで、寸止めされたこっちの身にもなってくれや。」
「お前はいい思いしやがっただろうが。」
「まあ、そやけど。」
「乾!今すぐ効果が永久に続く完成版作りやがれ。」
「まあ、慌てるなって。」
「作らせてどうするんですか?跡部さん。」
「日吉・・・、そんなの決まってんだろうが。
 にもう一度飲ませるんだよ。」
「ふざけんな、跡部!絶対飲まないんだから!!」
「うるせー、黙って飲みやがれ。」
「無理無理、絶対無理だから〜!!!」
さん、大丈夫だよ。もし飲んじゃっても、俺が一番に
 さんに声かけるから!」
「鳳、先輩差し置いてなに言ってやがんだ。アーン?」







授業を中断された青学生たちの冷たい視線が
突き刺さる中、跡部たちのマシンガントークは
止まりそうにない。




青学の授業中に割り込み、授業を妨害したということで、
氷帝に戻ってから、あたし達はこっぴどく叱られたのだった。













・・・ next? ・・・











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                    あとがき


    やっとこの回おわりました。
    長かった・・・。書いても書いても終わんなくて、
    どうしようかと思いました。
    それにしても、乾やばすぎです。凄すぎです。
    惚れ薬作れるのかよっ!というツッコミはしないで下さい。

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    2007/6/2  さえ


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